時代考証

 

 時代考証って難しいんだなあ。先日、仕事で金網職人さんとお話することがあって、その職人さんが時代考証について触れられていた。そこで話されていたのは、さいきん人気のある大河ドラマに一瞬だけ映った金網(魚を焼いたりするやつ)が現代風で、当時使われていたものじゃない、ということ。当時の技術ではその形にはなり得ない、みたいな話でした。

 

 映った時間はほんとうに一瞬で、ストーリーにも影響を与えないような微細な要素が、時代に合っていない。きっと金網を真剣に考えてきた職人さんだからこそ気がつけた部分で、普通の視聴者は意識にのぼってこないような、そんな要素。きっと時代劇ものは、時代に合わないこういう微細な要素がこれでもかってほど含まれているんだろう。だけれども、見ている人のほとんどは気がつかない。気にもしない、というか、できない。

 

 時代考証を担当する人は当然ついているんだろうけど、そんな微細なところまで注意がいくわけないだろうな、とも思う。だって、画面に現れる全ての要素について、専門的な知識を持っているわけではないだろうから。それに、細部にこだわればこだわるほど、制作費がどんどん膨らんでいくだろうし。じゃあ時代考証なんていらないかというと、やっぱりそうじゃない。時代劇にクーラーとか冷蔵庫とかでてきたら、もはやパロディになっちゃう。

 

 結局は、時代考証を担当する人のバランス感覚なのだろうな。お金と時間とストーリー展開を睨みながら、問題のない範囲に時代を設定していく作業。いやほんと、時代考証って難しいんだなあ。